
相続した土地や使っていない土地を売りたいと考えているものの、どこに相談すればよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。本記事では、土地を売りたい方に向けて売却の流れから注意点、費用や税金、相談すべき専門家まで詳しく解説します。
土地売却の流れ
まずは土地売却の流れについてみていきましょう。
売却準備と相場調査
土地を売りたいと考えた際、まず行うべきは売却準備と相場調査です。土地の権利関係や境界線の確認、建物の有無、必要書類の整理を行います。同時に周辺の類似物件の売却事例を調査し、おおよその相場を把握することが重要です。この段階で土地の現状を正確に把握して希望条件を整理し、売却に向けた戦略を立てていきます。
なお、登記権利証や固定資産税納税通知書、測量図などの必要書類を事前に準備しておくことで、後の手続きがスムーズに進みます。どうすればいいかわからない…という方は、司法書士に相談するか、不動産会社を選定してからその会社に相談してもOKです。
不動産会社への査定依頼
相場調査がある程度進んだら、複数の不動産会社に査定を依頼します。入力フォームの情報から簡単な査定を行う「机上査定」と担当者が現地で調査しながら行う「訪問査定」があり、より正確な価格を知るためには「訪問査定」がおすすめです。
3社程度から査定を受けることで、適正な売却価格を判断しやすくなります。査定結果を見る際は土地の立地条件、形状、法的制限、周辺環境などが総合的に評価されていることを確認しましょう。
査定結果とともに、各社の売却戦略や実績についても確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
媒介契約の締結
査定結果と提案内容を比較検討し、依頼する不動産会社を決定したら媒介契約を締結します。媒介契約には以下の3種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 一般媒介契約:複数社に依頼でき柔軟性がある
- 専任媒介契約:契約した不動産会社以外には依頼できなくなるが、定期的な報告を受けられる(2週間に1回以上)
- 専属専任媒介契約:専任媒介契約に加えて自分が発見した買主との契約もできなくなるが、より頻繁に報告を受けられる(1週間に1回以上)
契約期間や仲介手数料、売却活動の内容について十分に確認し、納得できる条件で契約を結びます。
売却活動と買主との交渉
媒介契約を締結してから売り出し価格を決定すると、不動産会社による売却活動がはじまります。インターネット広告、新聞広告、チラシ配布などを通じて買主を募集するのが一般的です。
購入希望者が現れた場合は、土地の現地案内や条件交渉を行います。価格だけでなく、決済時期や引き渡し条件についても調整していきます。複数の購入希望者がいる場合は、条件を比較検討しながら交渉を進めましょう。
不動産会社が仲介役となり、スムーズな交渉をサポートしてくれます。
売買契約の締結と決済・引き渡し
買主と価格や条件の合意がとれたら売買契約を締結します。
契約書には売買価格、決済日、引き渡し条件、特約事項などが明記されます。契約時に買主から手付金を受け取り、売買代金の残金は決済日に受け取るのが一般的です。
決済と同時に所有権移転登記を行うことで土地の引き渡しが完了します。登記手続きは司法書士が代行し、関係書類の確認と金銭の授受が行われます。鍵の引き渡しや関連書類の受け渡しをもって、すべての手続きが完了となります。
確定申告
土地売却で利益が発生した場合、翌年の2月中旬から3月中旬にかけて確定申告を行う必要があります。譲渡所得の計算を行い、所得税や住民税などに関して適切な税額を申告しましょう。
一定の要件を満たしていると優遇措置を受けられるケースがありますので、確定申告に向けて売買契約書、取得時の契約書、仲介手数料の領収書などを控えておいてください。税理士に相談することで、特別控除の適用や節税対策についてアドバイスを受けることができ、適切な申告手続きを進められます。
土地売却の注意点
土地を売りたい場合、事前に把握しておくべき注意点があります。これらのポイントを理解せずに売却を進めると、後々トラブルに発展したり、想定していた価格で売却できなかったりする可能性があります。
- 境界線の確定と測量を事前に実施する
- 土地の権利関係や法的制限を確認する
- 適正な売却価格の設定を行う
- 売却のタイミングと市場動向を考慮する
- 必要書類の準備と手続きを漏れなく行う
特に境界線の問題は土地売却でよく発生するトラブルです。隣地との境界が曖昧な場合、売却前に測量を行い境界を確定しておくことでトラブルを回避できます。
また、土地には建築制限や用途制限がかかっている場合があるため、事前に調査して買主にわかりやすく説明することが重要です。土地を売却した後に計画建物を法律的に建てられないことが発覚すると大きなトラブルに発展します。
売却期間を長引かせないためにも市場相場を十分に調査して適正価格での売り出しを心がけましょう。
土地売却で発生する費用・税金
土地を売却する際は以下のような費用や税金が発生するので留意しておきましょう。
仲介手数料
土地を売却する際に不動産会社に支払う仲介手数料は、売却価格に応じて法定上限が定められています。
売却価格が400万円を超える場合:売却価格×3%+6万円+消費税
例えば1000万円で土地を売却した場合、仲介手数料の上限は39万6千円です。ただし、この金額はあくまで上限であり、不動産会社によっては割引サービスを提供している場合もあるのでチェックしておきましょう。
印紙税
土地の売買契約書には印紙税がかかります。印紙税の金額は売買契約書に記載された売買価格によって以下のように決まっています。
- 1000万円超5000万円以下の場合:1万円
- 5000万円超1億円以下の場合:3万円
なお、一定の条件を満たす契約では、令和9年3月31日までに作成された契約書について軽減措置が適用されます。印紙は売買契約書に貼付し、消印することで納税が完了します。
登記費用
土地売却時には所有権移転登記が必要となり、この際に登録免許税と司法書士への報酬が発生します。
- 登録免許税:固定資産税評価額の2%(令和8年3月31日までは1.5%)
- 司法書士への報酬:5万円から15万円程度(相場)
また、抵当権が設定されている場合は抵当権抹消登記も必要となり、こちらは1筆※の不動産につき1000円の税金が発生します。
※1筆:土地登記簿で使われる土地の単位
譲渡所得税
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」に応じて計算され、所有期間によって税率が異なります。
- 所有期間が5年以下の短期譲渡所得の場合:39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)
- 5年超の長期譲渡所得の場合:20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
ただし、居住用財産の売却や相続した土地の売却については特別控除が適用される場合があるのでチェックしておきましょう。
その他の諸費用
土地売却時には上記以外にも様々な費用が発生します。以下はその例です。
- 測量費用(境界確定測量を行う場合)
- 建物解体費(既存建物がある場合)
- 地盤調査費用
- 土壌汚染調査費用
- 不動産鑑定費用
これらの費用は、売却価格から差し引いて手取り額を計算する際に考慮する必要があります。
土地売却で相談すべき専門家
土地売却に当たっては幅広い専門知識が必要です。必要に応じてプロの助けを借り、スムーズな土地売却を目指しましょう。ここでは土地売却をサポートしてくれる心強い専門家をご紹介します。
不動産会社
土地を売りたい場合、最初に相談すべきなのは「不動産会社」です。不動産会社は、土地の査定から売却活動、契約手続きまでをトータルでサポートしてくれます。特に昔から地域密着型の営業を行っている不動産会社は、地域の市場動向に精通しており、適正な売却価格の提案や効果的な販売戦略を立ててくれるでしょう。
また、買主との交渉や契約書の作成、決済手続きの調整なども行ってくれるため、売却に関する実務的な部分を安心して任せることができます。複数の不動産会社に相談し、実績や提案内容を比較検討しながら信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
司法書士
土地売却時の登記手続きを担当するのが「司法書士」です。所有権移転登記や抵当権抹消登記などの法的手続きを代行し、確実な所有権の移転をサポートしてくれます。
特に相続した土地を売却する場合は、相続登記が完了していない場合があるため、司法書士に相談しながら適切な手続きを進められるとトラブルが減ります。また、土地の権利関係が複雑な場合や共有名義の土地を売却する場合も、司法書士の専門知識が大きな助けになります。
税理士
土地売却に伴う税務処理については「税理士」に相談することをおすすめします。譲渡所得に課せられる税金の計算や確定申告の手続き、節税対策のアドバイスなどを受けることができます。
特に複数の土地を所有している場合や、事業用の土地を売却する場合は税務処理が複雑になりがちです。専門家のサポートを受けながらスムーズに進められるようにしましょう。また、相続税の申告が必要な場合や、売却収入を活用した相続税対策についても税理士に相談できます。
土地家屋調査士
土地の境界確定や測量が必要な場合は、「土地家屋調査士」に相談しましょう。隣地との境界が曖昧な場合や、登記簿上の面積と実際の面積に相違がある場合に、正確な測量を行い境界確定測量図を作成してもらうことができます。
また、土地の分筆※や合筆※が必要な場合の登記手続きもサポートしてくれます。土地売却をスムーズに進めるためには、事前に境界を確定しておくことが重要であり、土地家屋調査士の専門知識が必要不可欠です。
※分筆:1つの土地を複数に分けること
※合筆:複数の土地を1つにまとめること
弁護士
土地売却に関してトラブルが発生した場合や、複雑な法的問題がある場合は、「弁護士」に相談しましょう。隣地との境界に関するトラブル、契約違反による損害賠償請求、当事者間での意見対立などの問題解決を助けてくれます。
また、売買契約書の内容について法的なチェックを受けたい場合や、高額な土地取引でリスクを最小限に抑えたい場合にも弁護士のサポートが有効です。予防的な観点から事前に相談することで、後々のトラブルを回避することができます。
まとめ
土地売却を成功させるには、売却の流れを理解して適切かつタイムリーな対応を取ることが重要です。後のトラブルを回避するため、境界の確定や権利関係の確認、適正価格の設定といった注意点を踏まえてしっかり準備しましょう。
土地を売却する際はさまざまな費用や税金が発生するため、売却した後の計画をスムーズに進めるためにも事前に費用感を把握しておきましょう。自分ですべてを把握するのは難しいため、必要に応じて専門家の力を借りながら納得のいく売却を目指してください。
この記事を監修した人

株式会社ユナイテッドリバーズ 代表取締役 沢辺敦志(さわべあつし)
千葉県出身。自身の自宅購入時に、不動産仲介会社に不満を持ったことをきっかけに不動産売買仲介業を開業する。
自身の苦い経験から、受付・接客業務に特にこだわってチームづくりを心がけてサービス運営している。
趣味は料理、二児の父。
【保有資格】宅地建物取引士、FP他