
築年数が経った古い家の売却を検討している方の中には、どのような方法で売れば良いのか、どれくらいの価格で売れるのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。古い家を売るには複数の選択肢があり、それぞれメリットとデメリットが異なります。
本記事では、古い家を売る方法、コツや注意点、発生する税金・費用について詳しく解説します。古い家を現金化したいと考えている方は、ぜひ参考になさってください。
古い家を売る方法
古い家を売る際には、物件の状態や立地条件、いつまでに売りたいかなどによって最適な方法が変わります。主な売却方法は6つあり、それぞれ異なる特徴を持っています。売却を成功させるためには、自分の状況に合った方法を選択することが重要です。
そのまま売る
古い家および土地をそのままの状態で売却する方法です。買主が自分好みにリフォームしたり、古屋を取り壊して新築することを前提とした売却方法となります。
売主側で建物の解体費用や改修費用を負担する必要がないため、売主の負担が最も少ない方法のひとつです。一方で買主の負担が大きいため、建物の状態によっては買主が見つかりにくい場合があります。スムーズに売却するためには、建物と土地の状態を十分に考慮した価格設定が重要です。
家を壊して更地を売る
古い家を解体し、更地にしてから土地を売却する方法です。買主は土地を自由に使えるため、家を新築したいと考えている買主からも需要があります。また、建物の瑕疵や老朽化を心配する必要がなくなり、引き渡し後のトラブルが発生しにくいことがメリットです。
一方で、数百万円の解体費用がかかるケースが多く売却前の支出が必要になります。
瑕疵担保保険を付けてから売る
「既存住宅売買瑕疵担保保険」を付けて売却する方法です。この保険により、売却後に建物の欠陥が見つかった場合の修繕費用が保険でカバーされるため、買主は安心して購入できます。
保険料は10万円から15万円程度ですが、古い家でも安心感を付与でき、売却価格アップや早期売却につながる可能性があります。
リフォームしてから売る
建物の一部または全体をリフォームしてから売却する方法です。水回りや内装を新しくすることで、古い家の魅力がありながらも使いやすい物件として売り出すことができます。特に立地が良い場合や建物の骨組みがしっかりしている場合には、リフォーム費用を上回る売却価格アップが期待できます。
ただし、リフォーム費用の回収ができない可能性もあるため、事前に市場調査と費用対効果の検討が必要です。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。仲介を通じて一般のお客様に向けて売却するケースと比べて、売却価格は7割から8割程度になることが多いですが、短期間での売却が可能で、内覧対応や契約交渉の手間がかかりません。
また、建物の状態を問われることが少なく、古い家でも確実に売却できることもメリットです。早く現金化したい場合や、手間をかけずに売却したい場合に適した方法です。
空き家バンクを利用する
自治体が運営する「空き家バンク」に登録して売却する方法です。地方移住を希望する人や古い家をリノベーションしたい人などがターゲットのサービスで、仲介手数料が無料または格安になることが多く、自治体によっては補助金制度もあります。
ただし、都市部では空き家バンクの制度がない場合も多く、また空き家バンクの制度があったとしても売却まで時間がかかる可能性があります。
古い家を売る際の基本的な流れ
古い家を売る際の流れは、一般的な不動産売却と同様です。売却を成功させるためには、各段階でのポイントを理解し、適切に対応することが重要です。
- 物件の査定依頼
- 不動産会社との媒介契約締結
- 売却活動の開始・宣伝
- 購入希望者との交渉
- 売買契約の締結
- 決済・引渡し
- 確定申告
まずは不動産会社に査定を依頼し、物件の適正価格を把握しましょう。査定結果を確認した上で、信頼できる不動産会社と媒介契約を締結します。その後、各種サイトへの掲載や広告などによる売却活動を開始し、購入希望者が現れたら価格や条件の交渉を行います。条件面の合意ができれば売買契約を締結し、決済と物件の引渡しを行うこととなります。
また、一般的に不動産売却の翌年には確定申告が必要になることにも留意してください。
古い家を売るコツ
古い家の売却を成功させるためには、いくつかのコツがあります。これらのコツを実践することで、より良い条件での売却が期待できます。
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
- 物件の魅力を最大限に伝える資料を準備する
- 内覧時の印象を良くするため清掃やホームステージングを行う
- 適正な価格設定で早期売却を目指す
- 売却時期を市場動向に合わせて調整する
査定はできれば複数社に依頼し、査定結果だけでなく担当者の対応や販売戦略も比較検討しましょう。古い家は個別要因による影響が大きいので、複数社の査定を参考にしながら適正価格を把握するのが大切です。
また、建物の歴史や周辺環境の良さ、リフォーム履歴などを整理した資料を作成することで物件の価値を適切にアピールでき、高値を付けやすくなります。
内覧時には清掃を徹底して家具の配置を工夫することで、古い家でも魅力的に見せることができます。価格設定は市場相場を参考にしながらも、「早期売却を重視するか」「高値売却を目指すか」を明確にして戦略を立てるといいでしょう。
古い家を売る際の注意点
古い家の売却では、通常の不動産売却以上に注意すべき点があります。建物の老朽化や法的な問題、近隣とのトラブルなど、様々なリスクを事前に把握して以下のような対策を講じることが重要です。
- 建物の構造上の問題や設備の不具合の事前調査
- 建築基準法への適合状況の確認
- 境界線の確定と測量の実施
- 契約不適合責任に関する売買契約書の条項設定
- 家財の撤去
- 専門家のアドバイス
建物の構造上の問題については、売却前に専門家による詳細な調査を依頼し、必要に応じて修繕や告知を行いましょう。また、現在の建築基準法に適合していない既存不適格建物の場合は、再建築時の制限について買主に説明する必要があります。
境界線が不明確な場合は、測量を実施して明らかにしておき、近隣とのトラブルを未然に防ぐことが大切です。契約不適合責任については、古い家特有のリスクを考慮して売買契約書に適切な条項を盛り込むことで、売却後のトラブルを防ぐことができます。
建物の修繕や測量の実施等で手間や費用がかかる場合には、現況のまま購入してくれる不動産会社に買い取ってもらうことも有効な手段です。
また、古い家を引き渡す際は家財を撤去しておく必要があるので、売却を決めたら少しずつ物を処分していくようにしましょう。
最後に、古い家を売る際は専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。古い家は個別要因による影響が大きく、それを十分に考慮できないと売却価格が下がったり希望日までに売却できなかったりする可能性が高まります。
古い家を売る際の税金・費用
古い家を売却する際には、以下のような様々な税金や費用が発生します。これらの費用を事前に把握し、売却価格から差し引いて手取り額を計算することで、予定通りの売却を実現できます。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税(売却益が出た場合)
- 登記費用
- その他費用(測量費、解体費、ハウスクリーニング費など)
不動産会社に仲介を依頼する場合は、不動産会社に対して支払う仲介手数料が発生します。
また、売却益が出た場合には譲渡所得税が課税されます。所有期間が5年を超える場合は税率が軽減されたり、「居住用財産の3,000万円特別控除」や「買換え特例」などの税制優遇措置が利用できる場合もあるため、適用条件を確認しておきましょう。
その他、測量が必要な場合は50万円から100万円、解体する場合は100万円から300万円程度の費用がかかる可能性があります。これらの費用を総合的に考慮して、最適な売却方法を選択することが売却活動の成功への鍵となります。
おわりに
古い家を売る際は主に6つの方法があり、家の状況に応じた最適な選択をすることが重要です。いずれの方法を選択した際も、古い家ならではの個別要因をしっかり把握し、価格設定やスケジュールに反映させることでスムーズな売却が実現します。専門家のアドバイスを受けながら、家や土地の魅力を最大限アピールできる戦略を立てましょう。
監修者コメント
古い家の売却には、構造や権利関係の確認、税務の手続きなど多くの注意点があります。
また、新しい家やマンションの売却と異なり、個別要因に大きく影響されることも特徴です。
売却活動をスムーズに行い、また売却後のトラブルを防ぐためにも、専門家に早めに相談し、測量や修繕、契約条件の取り纏めを含めた準備を丁寧に進めることをおすすめします。
この記事を監修した人

柴田行政書士事務所 代表 柴田 駿(しばた しゅん)
1992年生まれ。東京都世田谷区出身。
親友の死をきっかけに、相続・終活領域で2021年に独立。
現在は相続・不動産専門の行政書士として、実家の取り扱いや介護・相続などについて話し合う『家族未来会議』のサービスを推進中。
【保有資格】行政書士 / 相続診断士 / 宅地建物取引士 / FP